■ Column 工房長のサイケデリックな日々 Vol.24
テーマ「アメリカ」
-「この声は小さすぎて君の元までは届かない」
-「たとえそれを知っていても、叫ばずにはいられない」
この歌詞は私がアメリカでの就労ビザを申請した際、
支援して頂いた移民弁護士に送った最後のメールでの一説だ。
今思い返せば、
中二病感満載で、顔から火が出るほど恥ずかしいメールだったが、
当時は素直にそう感じていたのだから仕方がない。
2013年の1月、
様々なコネクションを使いアクションを起こしていたが、
正式にアメリカ合衆国入国管理局から申請却下の通知が届いた。
アメリカでの鮨職人募集のラジオ放送を聴いてから約2年の歳月が経っていた。
アメリカと言えば、
子供の頃から見聞きしている ” 行ったことは無いが身近な国 ” だったように思える。
トムとジェリーや冒険野郎マクガイバーを観て育ち、
大草原の小さな家に出てきたソバカスの女の子に恋心を抱き、
高校の時にはその娘に激似した女子に出会い、告白して見事に振られた。
クリスマスにはカーネルサンダースは欠かせないし、
大人になってから飲むウイスキーといえば、
アルパチーノよろしくMr. john Danielsだろう。
タバコはキャメルから始まりアメスピに落ち着いてしばらく経つ。
映画といえばハリウッドであるし、
実際に我が家に所蔵してあるDVDの大半はアメリカの物語だ。
英語は殆ど話せないくせに、
映画のセリフだけは覚えていたりもする。
ブレードランナーでハリソン・フォードがショーン・ヤングに囁く、
「Say kiss me.(キスしてって言えよ)」というセリフ。
一度は囁いてみたいセリフではあるが、言う相手は慎重に選ばなくてはいけない。
そんな1度も行ったことがないアメリカに行けるという、願ってもないチャンスが訪れた。
かねてからミシガン大学と連携していたプロジェクトの関係で、
半ば無理やりであるが、招待という形で参加させてもらった。
その旅のついでに、
ニューヨークにも足を伸ばすことも叶った。
詳しくは次回のKOBO NEWSで語りたいが、
デトロイト近郊に位置するブライトモアという地域で、
そこで暮らす人々に、
ものつくりを身近に感じてもらうといったワークショップを開催した。
まだまだブラッシュアップが必要な感じではあるが、
はじめの一歩としては良いスタートが切れたと思う。
また、
デトロイト市内で開催された石巻工房展。
初の北米での展示会には、
さきのブライトモアで地元民によって制作された工房の家具が展示された。
ゆくゆくは、現在イギリスで展開している販売される地元で作りその地元で売るという、
メイドインローカルを踏襲した、
ブライトモアモデルの販売も視野に入れた構想が動き出そうとしている。
ニューヨークではハーマンミラー社のショールームに赴き、
そこはかつてジョージ・ネルソンがオフィスを構えていたというビルと知らされて驚き、
1983年に佐野元春が敏感に捉えた街のうねりとエネルギーの一端に触れる体験を得た。
今回の出張では、
私自身が石巻に居るだけでは発見できなかった、
新しい価値観と世界観を見出す事が出来たと思う。
更には、
不慣れな訪問者がその地で立ち回るためには、
少しばかりの勇気と多分な好奇心が必要だということをあらためて学べたし、
挨拶とエロい話は世界共通という点も再認識した。
この経験は、
石巻工房という生まれて間もないブランドを育てていくヒントになるだろう。
-「この窓は小さすぎて君の顔かも分からない」
-「たとえそれを知っていても、開かずにはいられない」
挑戦する勇気を与えてくれたアメリカにBesten Dankと伝えたいと思う。
(ドイツ語だけどね)